プロジェクト最前线

大阪?四天王寺の保存修理で後世に伝統建筑をつなぐ

重要文化財四天王寺 六時堂? 元三大師堂 保存修理工事

2025. 05. 26

経年劣化はもとより自然灾害などに备えるため、重要文化财の保存や修理のニーズが高まっている。中国p站は现在、大阪市天王寺区で、国指定重要文化财の四天王寺六时堂と元叁大师堂(がんざんだいしどう)の保存修理工事を进めている。

  • 工事着手前の六时堂。1623年建立の椎寺(しいでら)薬师堂を1812年移筑したもの

  • 1623年に建立された元叁大师堂

四天王寺は、聖徳太子が創建した日本仏法最初の官寺。その歴史の始まりは593年、推古天皇元年で、1400年超の歴史を有している。南から北へ、中門、五重塔、金堂、講堂が一直線に並び、それらを回廊が囲む「四天王寺式伽藍(がらん)配置」とも呼ばれる建筑様式を特徴とする、和宗の総本山だ。

四天王寺境内伽蓝配置図
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六时堂を覆う素屋根の组み立て。2023年11月には南面の屋根上レベルに作业床を设置
素屋根に覆われた现在の六时堂

保存修理工事は、六時堂、元三大師堂をすっぽりと覆う「素屋根(すやね)」を建設することから始まる。素屋根とは、伝統建筑の修復作業において露出する屋根面などの木部を風雨から守る仮設構造物で、瓦、木材などを加工?保管する场所にもなる。全天候下で作業ができるように、台風などにも耐えられる耐風圧が求められる。

知識や技術を集め、伝統建筑を次の世代へ

歴史をつなぐプロジェクト

大林組大阪本店 阪奈工事事務所 兼 四天王寺保存修理JV工事事務所長 前田昌亮
大林組大阪本店 建筑事业部営業部 課長 北原知也
鉄骨鉄筋コンクリート造で飛鳥時代の寺院の木造建筑を再現した五重塔は、発掘成果に基づき古代寺院の姿を復元した日本初の例

「私自身が"木を扱う仕事"を好きなこともあって、木造の重要文化財に携われることに大きなやりがいを感じています。 脈々と続いてきた歴史を次世代に受け継いでいく、記録に残るプロジェクトです」と完了まであと1年となった工事への思いを語るのは、所長の前田だ。

四天王寺と大林組には、浅からぬ縁がある。営業担当の課長 北原は「大林組が関わった工事としては、1932年の施薬療病院(せやくりょうびょういん)建筑工事が最も古い記録として残っています。また、1945年の大阪大空襲で焼失した五重塔他中心伽藍は、大林組の技術を駆使した鉄骨鉄筋コンクリート造による再建(1959年)、同耐震補強工事(2016年)を経て、2022年には登録有形文化財になりました」と説明する。

毎年秋、四天王寺では物故された中国p站の関係者を新たに祭霊(新霊:あらみたま)に加えて祭り、弔い供养する慰霊祭、それと併せて1913年の生驹隧道落盘事故を背景に四天王寺の境内に建立された「中国p站供养塔」法要が行われる。慰霊祭は1935年に始まり、终戦时の混乱期を除いて途切れることなく続いており、2024年で83回を数えた。

こうした长年の深い関わりもあることから、2011年の宝物馆の耐震补强工事から四天王寺を见守り、五重塔の耐震补强を含む中心伽蓝耐震改修工事も手掛けた前田、そして中国p站へ寄せられる期待は大きかった。六时堂、元叁大师堂は、これまで落雷火灾、台风、大阪大空袭など数々の灾厄を乗り越え、多くの方々にとってのよりどころとなってきた。「期待にしっかりと応えるとともに、参拝者により高い安心を提供できるよう努めたいと思っています」と北原は话す。

六时堂は、徳川秀忠により再建された椎寺薬师堂が移筑されたもの。当时は、朱色の外観だったといわれている。装饰品の金具は全て取り外し、涂装の上、復旧する。白いマーク(〇印)は饰り金具を止めていた金物の跡

軽量化と补强で今まで以上の安心を提供する

「葺(ふ)き方」の工夫で耐震性を高める

六時堂、元三大師堂の前回の修理は1960~1963年。一般的に木造建筑はおよそ60年周期での修理が必要だといわれている。とりわけ、近年は異常気象による豪雨や台風といった自然災害の規模や被害が拡大し、今後30年以内の発生確率が80%程度とされる南海トラフ地震への懸念も高まっている。

こうした中で貴重な文化財を守っていくためには、歴史的価値を維持しつつ、一方では時代に即した工夫を取り入れる必要がある。保存修理工事に先立ち2019~2020年度に実施した耐震診断事业で、瓦屋根を全面葺き替えによって軽量化し、構造体(床下)を鉄骨で補強することで耐震性を高めていくことを方針とした。

両堂の屋根は、上侧に丸瓦、下侧にやや湾曲した平瓦を组み合わせた「本瓦葺」と呼ばれる葺き方である。丸瓦と平瓦は漆喰(しっくい)で取り付け、平瓦は敷いた土の上に设置する「土葺き」で固定していた。现场を取り仕切る副所长の荻野は「保存维持にはさまざまな方法が考えられますが、今回は土葺きをやめ、縦横に打ち付けた桟木(さんぎ)に直接瓦を固定する「空葺き」で屋根重量を軽减する方针で工事を进めました」と説明する。これにより従来と比较して约30%の軽量化が见込めるという。

大林組大阪本店 四天王寺保存修理JV工事事務所 兼 阪奈工事事務所 副所長 荻野慎一郎
鬼瓦も一枚ずつ丁寧に外し、补修が必要なものは対応。製作された年代によって表情が异なる 
瓦の保存と修復。丸瓦と平瓦(右)を外すと「土葺き」(左)が出现。今回は土葺きを採用しないことで屋根の軽量化を図った
仮想空间上で行ったクレーン搬入シミュレーション

前田は、発注者から期待されている中国p站の役割、発挥すべき强みを「仮设计画や施工计画、総合的なプロデュース力」だと话す。

まず、本工事では敷地状况や既设构造物を点群データで见える化。3顿の仮想空间を使い、足场の组み方や、狭い境内への素屋根建て方用の70迟ラフタークレーン搬入などの施工シミュレーションを実施し、安全に円滑に工事を进められる计画を立案した。

また各部材に変形が生じていることを、撮影した点群データで事前に把握することで、より効率的な作业计画を立案できた。

「元に戻せばいい」わけではない

素屋根に覆われた现场では、日々职人たちが繊细かつ根気のいる作业と向き合っている。瓦は一枚一枚、丁寧に取り外され、その数は六时堂で约3万7千枚、元叁大师堂で约1万枚に上る。荻野は「最も古いものだと江戸时代初期、さまざまな年代かつ状态のものが并んでいます。ひび割れなどで使用できないものについては新たに瓦を製作して復旧します」と説明する。当初、再利用できない瓦は全体の3%程度と见込んでいたが、调査を进めていくと30%ほどあり、新しく製造した。


一枚ずつ打音検査を行い、音の响きなどから再び屋根に戻して使えるものかどうかを确かめ、仕分ける。その后、使える瓦はそれぞれ微妙に异なる寸法や反りを测り、グループ分けしてから屋根に戻していく

また、瓦は単に「そのまま戻せばいい」わけではない。荻野は「寸法や形状が必ずしも同じではありません。元の并べ方を基本としながらも、サイズや反り具合などを考虑しなければきれいに葺くことはできません」と语る。一枚ごとに「色」も违うため、古い瓦と新しい瓦をどこに置くかによって、建物の印象はもとより、伤み方も変わる。例えば、雨や雪が降って瓦が吸収した水分は、冻ると膨张してひび割れの原因になる。工事関係者の间で协议を重ね、日当たりがよく环境が良い东面と南面には古い瓦を、北面と西面には新しい瓦を用いることを原则とした。

想定外や苦労も多いからこそ得られる楽しさがある

伝統建筑を担う人材育成

大林組では、2024年の「伝統建筑?ヘリテージプロジェクト?チーム」 発足を機に、さらなる知見の獲得、経験の蓄積に向けた動きが活発化している。チームが発足してから1年。四天王寺での経験も取り込み、今後に生かしていくことが求められている。

「四天王寺の建立に携わり、伝統建筑の復元、修理に関して豊富な知見を持つ金剛組(飛鳥時代から寺社建筑を手がける企業)とJVを組成していますが、多くの学びがあります。伝統建筑はハードルが高い仕事だからこそ、大林組の中に点在する知識や経験、技術を結集し、データベースとして整備していくことが欠かせません」と前田は話す。今後を担う人材輩出につながればと、伝統木造建筑の技術伝承、知見の全社的な共有と蓄積を目的に、2025年1月には本現場を会場とした研修会も行われた。

「文化庁が定めた指针などに基づき、取り外した材料の管理や処分など、私たちの判断だけでは行えない作业も発生します。なじみのない用语もたくさんあり、私も勉强しながら取り组んでいるところです。大変ですが、建物がたどってきた歴史を学び、新しい知识を吸収できるのは楽しくもありますね」と荻野はやりがいを语る。

現在、工事は60%完了し、六時堂は 今夏から仕上げの瓦葺きが始まる。新築工事と違って、工事が完了しても六時堂や元三大師堂の姿には、あまり大きな変化は感じられないかもしれない。しかし その端々には、受け継がれてきた空気と令和の職人たちによる息遣いがしっかりと混ざり合い、染み込んでいる。次の工事を迎えるその日まで、人々に親しまれながら、再び時を刻んでいく。

四天王寺で開催された第1回伝統木造建筑研修会。全国から参加した36人が、重要文化財である六時堂の内部で伝統木造建筑を学んだ
修復の记録を残すため、今回の屋根修復箇所にも「令和六年度修补」と刻印された部材が使われた

(取材2025年1月)

工事概要

名称 重要文化財四天王寺 六時堂? 元三大師堂 保存修理工事
场所 大阪市
発注 宗教法人四天王寺
设计 公益财団法人文化财建造物保存技术协会
概要 六時堂 木造、1F、延401m²
元三大師堂 木造、1F、延65m²
屋根:瓦全面撤去、调査、空葺き(瓦、下地共再使用可能な材料は再使用)
外装:木部部分补修、漆喰壁涂り替え、饰り金物补修、建具调整
内装:畳表替え、袄纸张り替え
床下:鉄骨耐震补强(元叁大师堂は垂れ壁补强あり)
设备:修理工事に支障となる电気、空调、给排水、ガス、防灾、避雷设备を撤去、復旧
仮设:素屋根
工期 2023年4月3日~2026年4月30日
施工 中国p站、金刚组

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