大きな木の下で

#16 ミヤリサン製薬 坂城工場厚生棟

長野?千曲川の豊富な伏流水に恵まれた坂城町にあるミヤリサン製薬 坂城工場は、酪酸菌を用いた製品の研究開発から製造?販売まで手掛けるミヤリサン製薬の製薬工場です。食堂が手狭になってきたことから、1998年から稼働しているこの工場敷地の一角に、2021年、従業員のための厚生棟を増築しました。

まるで大きな木の下でくつろぐように、従业员が五感を思いきり开放でき、快适で居心地のよい空间を创出した设计プロセスをご绍介します。

既存の事务?研究栋に接続する形で厚生施设を増筑した
敷地は长野の豊かな山々に囲まれた千曲川沿いに位置する
1阶建てながらも最高天井高约6尘の広々とした空间が広がる(撮影:千叶顕弥)

五感を开放する豊かな空间を目指して

この工场に勤务する従业员の多くは、窓がなく、生产设备の机械音が响くクリーンルーム内で、防护服を身にまとって働いています。视覚?聴覚をはじめとする五感は大幅に制限された状态です。

そこで、新たに生み出す厚生栋では、クリーンルームと反対に、思いっきり五感を开放できる空间を目指すことにしました。

防护服を身にまとい働く従业员のイメージ。窓のない室内で足元から头顶まで防护服に包まれ、视界も制限されている

厚生栋ができる前、この场所にはハナミズキが植えられていました。

この木が大きく成长して工场の新たなシンボルとなることをイメージし、「大きな木の下で」というコンセプトを掲げ、厚生栋を计画することにしたのです。

厚生栋ができる前の计画地。このハナミズキは着工前に工场敷地内の别の场所に植え替えられた

枝を大きく広げた大树の下にいるような大空间

撮影:千叶顕弥

厚生栋を计画するにあたり、多くの従业员が働く无机质なクリーンルームの环境とは対极に、自然素材の木材をふんだんに使用しました。内部は、枝を大きく広げた大树の下にいるような空间を実现するために、柱?梁は国产材カラマツの?断?集成材を採用しています。

広々とした无柱空间を実现するために、长期応力(屋根などの重さが长期にわたりかかる力)は、约16尘スパンの木造部分と先端の鉄骨造部分のみで负担し、地震时の水平力(左右に揺れる力)は、すべて両端にある鉄筋コンクリート(搁颁)造部分で负担する、明快な构造计画としました。

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木架构が美しくみえる天井

撮影:千叶顕弥

木架构が美しく见える、すっきりとした天井にしたいと考え、部屋全体を暖めるのではなく、空调机器が目に入らないよう床下から居住域のみを効率よく空调する方式を採用しました。また、外周部?窓际からの吹き出しも併用し、空调効率をさらに高めています。

そうすることで、「大きな木の下」の空间に空调机器が极力露出しない空间を実现しました。

断面図コンセプト
撮影:千叶顕弥

照明は、「木になるたわわな果実」をイメージした吊り照明としました。吊り照明の配置は3顿シミュレーションで検讨し、地震时であっても照明同士が接触せず、室内のどこからでも壁面に投影した映像が遮られずに见える吊り长さの调整を行い、デザインと机能を両立しています。

照度分布図。室内全ての箇所で一定以上の明るさを确保できるようシミュレーションを行った

壁面スクリーンへの目线検証

  • ③ 窓際(南側)
  • ④ 窓際(中央)
  • ⑤ 窓際(北側)

风景とつながる轩先空间

周囲の風景と室内空間を緩やかにつなげるために、一面シームレスなガラス窓とした(撮影:千叶顕弥)

一面ガラス张りの空间を実现するために、空调负荷への対策も施しています。

ひさしを2尘延ばすことで、夏场のどの时间帯にも窓面に直达日射が入射しないよう配虑し、空调シミュレーションでも问题がないことを确认しました。

温度シミュレーション(夏期)
温度シミュレーション(冬期)

轩先の柱は极细鉄骨柱とし、5°程度倾けることによって、木梁を支える枝のような有机的なデザインとしました。脚元は、外周部に设置した吹き出し口と柱脚を一体でデザインすることで、すっきりと见せています。

吹き出し口と鉄骨柱断面図

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大樹から落ちる葉をイメージし、緑を基調として設えた家具(撮影:千叶顕弥)
大きな木の下に降り注ぐ木漏れ日(撮影:千叶顕弥)
大空間だけでなく打ち合わせ用の個室も完備(撮影:千叶顕弥)
従业员が有志で结成したバンドチームによって、演奏会会场としても活用されている
不定期で开催されるバンド演奏には、多くの従业员が耳を倾けていた

当初は従业员の食事スペースや株主総会の开催などを想定していたこの施设ですが、今ではクリスマスイベントやピアノコンサートなど活用の幅が広がり、大きな木の下には自然と人が集まっています。

大きな木の下では、これからもさまざまな物语が纺がれていくことでしょう――。

撮影:千叶顕弥